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青森地方裁判所 昭和36年(ホ)2号 決定 1961年12月28日

被審人 十和田観光電鉄株式会社

主文

被審人を

岡山安太郎に対する救済命令不履行につき過料一〇万円に、

松田義美に対する救済命令不履行につき過料一〇万円に各処する。

手続費用は、被審人の負担とする。

理由

被審人は、青森県十和田市大字三本木字下平二五番地において従業員約三七〇名を雇用し、鉄道、観光バス、タクシー等の事業を営む株式会社であるが、昭和三三年七月二三日同会社の従業員で三本木線路班副工手長であつた岡本安太郎、同じく三本木駅小荷物係であつた松田義美の両名に対し、各同会社企画室勤務を命じたところ、同年八月一九日同人らの所属する十和田観光電鉄労働組合から青森地方労働委員会に対し、右職場配置転換は、労働組合法第七条第一号に違反する不当労働行為であるとして救済命令の申立がなされ、同年一〇月二五日同委員会から「被審人は、右両名に対する昭和三三年七月二三日附人事異動を取り消し、それぞれ原職に復帰させなければならない。右命令は、昭和三三年一一月三〇日までに履行しなければならない。」ことなどを内容とする命令をうけた。そこで、被審人は、所定の期間内の昭和三三年一一月一〇日中央労働委員会に再審査の申立をしたが、同三四年一〇月七日同委員会から「本件再審査申立を棄却する。」旨の命令をうけ、右命令書は、同年同月一七日被審人に交付されたので、更に所定の期間内の同年一一月一三日右委員会を被告として東京地方裁判所に対し、同裁判所昭和三四年(行)第一四七号事件として再審命令の取消を求める行政訴訟を提起したが、同三五年七月一五日右訴訟を取り下げ、右委員会は、同年一〇月五日右取下に同意したので、前記命令は、同日を以て確定したものである。しかるに、被審人は、これよりさき、昭和三五年五月一一日右両名をその原職に相当する職場である岡本については鉄道部保線課、松田については鉄道部運輸課の各勤務を命じていたのに拘らず、現実には右の職務に従事せしめないで、企画室所属の従業員と共に三沢(当時古間木と称した。)営業所拡張工事や同営業所を中心とする三沢十鉄観光センターの建設工事に人夫などとして従事せしめていたのであるが、右確定後も依然として右両名を右工事に人夫などとして従事せしめ、昭和三六年八月一七日に至るも前記確定命令を履行していないものである。

右の事実は、被審人会社代表者代表取締役杉本行雄審尋の結果、同会社総務部厚生課長江渡金一郎、同会社自動車部営業課長松尾良夫及び岡山安太郎、松田義美、小笠原源太郎各審問の結果その他本件記録に徴し、これを認めるに十分である。

被審人の所為は、労働組合法第三二条後段第二七条に該当するから、被審人を前示岡山及び松田に対する各救済命令不履行につき、それぞれ過料一〇万円に処することとし、尚手続費用の負担につき非訟事件手続法第二〇七条第四項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 野村喜芳 福田健次 野沢明)

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